低圧系統用蓄電池の設備構成|PCS・EMS・受電盤・遠隔監視を解説

  • 2026/07/15
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この記事の結論

低圧系統用蓄電池の設備は、蓄電池・PCS(電池・変換)、EMS等の制御機能・通信・遠隔監視(制御・通信)、盤・計量・遮断器(受電・計量)、保護装置・接地(保護・安全)の4系統で構成されます。機器単体の性能ではなく、アグリゲーターの要件と連系条件に合う構成になっているかが、事業として動くかどうかを決めます。

低圧系統用蓄電池(連系出力50kW未満)の検討では、「どの蓄電池を選ぶか」から入りがちです。しかし実務では、機器を先に決めて後から構成が合わなくなる手戻りが少なくありません。

必要な設備には、法令・制度上必要なもの、電力会社やアグリゲーターとの協議で決まるもの、そして実務上推奨されるものが混在しています。この3つを区別せずに機器を発注すると、協議段階で仕様変更や追加工事が発生します。

この記事では、低圧系統用蓄電池の設備構成を、電力の流れと通信・制御の流れの2枚の構成図で整理し、各機器の役割と、機器選定前に確認すべきポイントをEPC・電気工事会社の目線で解説します。

この記事でわかること
  • 低圧系統用蓄電池を構成する4系統の機器と、それぞれの役割
  • 電力の流れ(系統〜蓄電池)と通信・制御の流れ(アグリゲーター〜機器)の全体像
  • 蓄電池容量・蓄電所の出力・連系出力という3つの数字の違い
  • 法令・制度上必要な設備、協議で決まる設備、実務上推奨する設備の区分
  • 単線結線図と責任分界で確認すべきこと、機器を発注してよいタイミング

設備構成の全体像と、混同しやすい3つの数字

低圧系統用蓄電池に必要な機能は、役割で見ると次の4系統に分かれます。製品によって複数の機能が一つの機器へ統合される場合はありますが、事業運用上、いずれの機能も欠かせません。

電池・変換 蓄電池・PCS:電気を貯め、直流と交流を変換する系統です。事業の心臓部ですが、後述のとおり、この2つだけでは系統用蓄電池は動きません。
制御・通信 EMS等の制御機能・通信ゲートウェイ・遠隔監視:アグリゲーターの充放電指令を受け、いつ・どれだけ充放電するかを制御し、稼働実績を送信する系統です。付属機能ではなく、事業運用の中核です。
受電・計量 盤・計量設備・CT・遮断器:系統と設備をつなぎ、電力量を計り、回路を保護・開閉する系統です。取引の根拠となる計量もここに含まれます。
保護・安全 保護装置・接地:系統側・設備側の異常時に、設備を安全に切り離すための系統です。構成は連系協議で確定し、連系前の試験で確認します。
低圧50kW未満の全体像から知りたい方へ低圧系統用蓄電池の事業化・申請・アグリゲーター連携を確認する

「低圧50kW未満」は、PCSの銘板容量だけでは確定しない

設備構成を考える前に、混同しやすい3つの数字を分けておく必要があります。蓄電池容量(kWh)、蓄電所の出力(kW)、連系出力(kW)は、それぞれ別の判定に使われる別の数字です。

数字意味主に関わる判定
蓄電池容量(kWh) 電気を貯められる量 消防関係の規制・届出の判定に関わります(詳細は設置基準・消防の記事で解説)
蓄電所の出力(kW) 電気事業法上の蓄電所として外部へ供給できる電力の大きさ(PCS送電端の出力とは別に整理されます) 蓄電所に対する保安規制・手続きの区分確認に使われます(保安規程・保安体制など)
連系出力(kW) 系統側に出す出力 低圧・高圧という接続区分の整理に使われます(50kW未満=低圧)

「低圧50kW未満」という接続区分は、系統へ連系する出力で整理されます。一般的にはPCS(逆変換装置)の定格出力または合計出力が判断の基礎になりますが、複数台構成や出力制御の設定によって、機器容量と申請上の連系出力が一致しない場合があります。したがって、PCSの銘板容量だけで確定せず、単線結線図・出力制御方法・一般送配電事業者への申請内容を含めて確認します。申請区分の詳細は、系統用蓄電池の電力申請・系統連系の記事で解説しています。

申請区分・手続きの流れを確認したい方へ系統用蓄電池の電力申請・系統連系の手順を確認する

構成図で見る:電力の流れと通信・制御の流れ

低圧系統用蓄電池の構成は、電力の流れ通信・制御の流れの2つに分けて見ると整理しやすくなります。機器は同じ場所に並んでいても、この2つの流れは別のルートで動いています。

図1|電力構成図(電力の流れ)
電力系統 計量設備取引用の電力量計 主幹・連系遮断器+保護機能異常検出時に系統から切り離し PCS直流⇄交流の変換 蓄電池充電・放電
図2|通信・制御構成図(指令と実績の流れ)
アグリゲーター クラウド/通信回線 EMS通信ゲートウェイ経由 PCS・BMS・計量器 充放電制御・監視・実績送信
図1の並びは構成の順序を示し、実際の電力は充電時は系統から蓄電池へ、放電時は蓄電池から系統へと双方向に流れます。図2の実績送信は、EMSからクラウドを経由してアグリゲーターへ戻る流れも含みます。保護機能は、CT等の計測信号を受けて遮断器へ開放指令を出す構成が一般的で、図では機能の並びとして簡略化しています。盤や機器の分け方・名称は構成によって変わるため、実際の配置は単線結線図で確認します。

以下の章で、この図に登場する機器を系統ごとに見ていきます。

蓄電池とPCS(電池・変換)

蓄電池:電気を貯める本体

蓄電池は、電気を直流で貯める本体です。低圧の系統用蓄電池では、屋外設置型の筐体に電池モジュールと、電池を管理するBMS(バッテリーマネジメントシステム)が収められている構成が一般的です。BMSは、セルの電圧・温度などを監視して電池を保護する、蓄電池側の管理装置です。

機器選定では、蓄電池容量(kWh)だけでなく、充放電できる出力、想定される劣化とメーカー保証の条件、屋外環境への対応(温度・防水防塵)、そしてアグリゲーターやEMSとの接続実績を確認します。カタログ上の容量が同じでも、運用要件に接続できなければ事業では使えません。

PCS:直流と交流を変換する装置

PCS(パワーコンディショナ)は、蓄電池の直流と系統の交流を変換する装置です。充電時は交流を直流に、放電時は直流を交流に変換します。系統側に出す出力はPCSを通るため、連系出力の設定・構成に直結します。

低圧連系では、系統連系に必要な保護機能の一部をPCSが内蔵している構成があります。ただし、後述のとおり、内蔵機能で足りるかどうかは一律には決まりません。また、PCSが認証を受けた機器かどうかは、連系協議の進み方に影響することがあるため、機器選定の段階で確認しておくべき項目です。

PCSとEMSは役割が違います。PCSは「電力を実際に変換する」装置、EMS等の制御機能は「いつ・どれだけ充放電するかを決めて指示する」仕組みです。制御機能は、専用EMS、通信ゲートウェイ、PCS内蔵機能など、製品によって実装方法が異なります。重要なのは独立したEMS機器の有無ではなく、アグリゲーターの指令を受け、PCSを制御し、計量・稼働実績を送信できる構成になっていることです。

EMS等の制御機能・通信・遠隔監視(制御・通信)

低圧系統用蓄電池は、単体では規模が小さいため、アグリゲーターが複数の設備を束ねて運用する形が基本になります。その束ねを成立させるのが、EMS等の制御機能・通信・遠隔監視です。この系統は付属機能ではなく、事業運用の中核です。通信が止まれば指令に応答できず、実績も送信できないため、事業としての運用が止まります。

EMS:運用の指令を受けて制御する

EMS(エネルギーマネジメントシステム)は、アグリゲーターからの充放電指令を受け、PCSに制御指示を出し、計量・稼働のデータを集めて実績を送信する役割を担います。この制御機能は、専用のEMS機器として置かれる場合もあれば、通信ゲートウェイやPCS内蔵機能に統合される場合もあります。BMSが「電池を守る」装置、PCSが「電力を変換する」装置であるのに対し、EMSは「運用を制御する」装置です。

アグリゲーターがEMSや通信方式を指定する場合も多いため、EMSの選定は、アグリゲーターとの接続要件の確認とセットで進める必要があります。確認すべき契約・接続条件の詳細は、系統用蓄電池のアグリゲーター記事で解説しています。

通信ゲートウェイ・回線・遠隔監視

通信ゲートウェイは、現地の機器(PCS・BMS・計量器)とクラウド側をつなぐ通信の出入口です。回線には、現地の通信環境に応じてモバイル回線などを使います。土地選定の段階で通信環境を確認しておく必要があるのはこのためです。

遠隔監視は、稼働状態・故障・通信断を離れた場所から把握するための仕組みです。低圧の複数案件を束ねる運用では、1台の不調が束ね全体に影響するため、異常に気づける体制を機器構成の段階から組み込んでおきます。

通信機器のセキュリティ要件(JC-STAR)

通信機能を持つPCS、EMS等の出力制御装置、遠隔監視装置については、低圧50kW未満でも、2027年10月以降に契約申込みを行う案件から、JC-STAR★1を取得した対象機器の利用が系統連系要件になります。特別高圧・高圧は2027年4月以降の契約申込みが対象です。

判断基準は接続検討の受付日ではなく、契約申込日です。したがって、2027年10月以降の契約申込みが見込まれる低圧案件では、機器発注前に、採用予定のPCS・EMS・遠隔監視装置のうち、どの製品・型番がJC-STARの対象となり、★1を取得しているか、または取得予定かを確認します。

契約条件・接続要件の確認項目を知りたい方へ系統用蓄電池のアグリゲーター(収益化・出口戦略)を確認する

盤・計量設備・CT・遮断器(受電・計量)

系統と設備をつなぐ部分には、遮断器や計量設備を収めた盤を設けます。受電盤・連系盤・計量盤といった名称は、構成によって分け方も呼び方も変わります。名称ではなく、「どの機能がどの盤に入っているか」を単線結線図で確認するのが実務の見方です。

機器役割
主幹・連系遮断器回路の開閉と過電流時の保護を担います。点検・工事時の切り離し点にもなります。
計量設備系統との間でやり取りした電力量を計る、取引の根拠となる設備です。計量の方式や計量点は、一般送配電事業者・アグリゲーターの要件によって変わるため、事前確認が必要です。
CT(変流器)電流を計測用に変換するセンサーです。計量・監視・制御のデータの元になります。取付位置と向きが図面どおりであることが、正しい計量・制御の前提です。
分岐回路・端子部PCS・EMS・通信機器など、各機器への電源供給と接続をまとめます。

引込の構成(引込点・引込方法)は、現地の配電設備の状況によって変わり、一般送配電事業者との協議で確定します。盤の配置は、保守動線・搬入経路・離隔とも関わるため、土地・レイアウトの検討と切り離せません。土地側の確認項目は、系統用蓄電池の土地選びの記事で解説しています。

設置場所の条件を整理したい方へ系統用蓄電池に向く土地・向かない土地を確認する

保護装置・接地と保安体制(保護・安全)

保護装置:内蔵か外付けかは一律に決まらない

保護装置は、系統側や設備側の異常時に、設備を安全に系統から切り離すための機能です。低圧連系では、必要な保護機能の一部をPCSが内蔵している構成があります。

ただし、PCS内蔵の保護機能で足りるか、外付けの保護装置が必要かは、一律には言えません。採用する機器の認証内容と、一般送配電事業者の技術要件・連系協議によって、案件ごとに確定します。整定値(どの条件で動作させるか)も協議で決まる項目です。保護の構成と整定は、連系前の試験で実際に動作を確認します。試験・確認の進め方は、試験対応のサービスページで整理しています。

接地:安全の土台

接地は、漏電時の感電・火災を防ぐための安全の土台で、技術基準への適合が求められます。盤・PCS・蓄電池筐体・フェンスなど、対象と接地の方式は構成によって変わるため、設計段階で接地計画として整理します。

低圧でも保安規程と主任技術者体制は必要

「低圧だから保安体制は不要」という理解は誤りです

系統用蓄電池(蓄電所)は、出力の大小にかかわらず事業用電気工作物であり、低圧50kW未満でも、保安規程の届出と、電気主任技術者に関する保安体制(自社選任または外部委託承認)が必要です。保安体制・消防・離隔を含む設置基準の全体は、系統用蓄電池の設置基準の記事で解説しています。

消防・離隔・保安体制まで確認したい方へ系統用蓄電池の設置基準(離隔距離・消防・保安)を確認する

単線結線図と責任分界

ここまでの機器を1枚に集約するのが単線結線図です。単線結線図には、引込・計量・遮断器・保護装置・PCS・蓄電池・接地といった構成要素と、その接続関係が記載されます。申請・技術協議・施工・試験のすべてで共通言語になる図面であり、一般に設計・EPC側が作成します。

単線結線図とあわせて確認すべきなのが、責任分界です。どこまでが一般送配電事業者側の設備で、どこからが事業者側の設備か(財産と保安の分界)、そして運用開始後の監視・保守・障害対応を誰が担うか。機器の話とお金・責任の話は、図面の上でつながっています。アグリゲーターとの運用上の責任分界は、アグリゲーター記事の契約条件の確認項目とあわせて確認してください。

設備の3区分と、機器選定の順序

最後に、ここまでの内容を「何によって決まる設備か」で整理します。この区分を意識すると、どの確認を先に進めるべきかが見えます。

区分該当する主な項目
法令・制度上必要 技術基準への適合(接地・保護を含む)、蓄電所としての保安規程の届出と主任技術者に関する保安体制、契約・取引に必要な計量。低圧でも必要という結論は変わりません。なお、計量器の種類・設置主体・計量点は、契約および一般送配電事業者の要件に従います。
協議・要件で決まる 保護装置の構成(PCS内蔵か外付けか)と整定、計量の方式・計量点、引込の構成、EMS・通信方式・計量データの仕様(アグリゲーター指定)。一般送配電事業者・アグリゲーターとの協議・要件確認で案件ごとに確定します。
実務上の推奨 通信断を検知できる遠隔監視の構成、保守動線を踏まえた盤配置・機器配置、交換・撤去を見込んだ据付計画。法令上の義務ではありませんが、みらい電設では長期運用の前提として推奨しています。

この区分を踏まえると、機器選定の順序は次のようになります。

1

運用先(アグリゲーター)の要件確認

2

連系協議の条件確認

3

機器構成の確定

4

単線結線図の作成

5

発注

要件と協議の確認より先に機器を発注すると、適合しない機器を抱えるリスクがあります。急ぐ場合こそ、確認の順序を崩さないことが結果的に早道です。

低圧系統用蓄電池の設備構成を相談する

機器構成の検討、単線結線図の作成、連系協議・アグリゲーター要件との整合、施工・試験まで、案件状況に合わせて対応します。機器選定前の段階からご相談いただけます。

設備構成・機器選定を相談する

よくあるご質問

低圧系統用蓄電池には、どのような機器が必要ですか?

大きく4系統です。蓄電池とPCS(電池・変換)、EMS等の制御機能・通信・遠隔監視(制御・通信)、盤・計量設備・CT・遮断器(受電・計量)、保護装置と接地(保護・安全)です。機能が一つの機器に統合される製品構成もあります。どこまでが法令・制度上の要件で、どこからが協議・運用要件かは構成によって変わるため、単線結線図ベースで確認します。

PCSの出力が50kW未満なら、低圧の系統用蓄電池になりますか?

一般的にはPCS(逆変換装置)の定格出力または合計出力が、低圧・高圧の接続区分を判断する基礎になります。ただし、複数台構成や出力制御の設定によって、機器容量と申請上の連系出力が一致しない場合があります。また、電気事業法上の蓄電所の出力と、消防関係で確認する蓄電池容量(kWh)は別の数字です。単線結線図と申請内容を含めて確認してください。申請・区分の詳細は電力申請の記事で解説しています。

キュービクルは必要ですか?

低圧連系では、高圧受変電設備としてのキュービクルは通常設置しません。ただし、低圧でも受電・連系用の盤、主幹遮断器、計量設備、必要な保護機能、接地は必要です。これらを一体の屋外盤に収めるか、複数の盤に分けるかは機器構成と一般送配電事業者との協議で決め、単線結線図に反映します。

EMSや遠隔監視は省略できますか?

省略を前提にした計画はおすすめしません。市場での運用はアグリゲーターの充放電指令に応答することが前提であり、EMS等の制御機能・通信・遠隔監視は付属機能ではなく事業運用の中核です。制御機能の実装方法(専用EMS・PCS内蔵など)は製品によって異なりますが、アグリゲーターがEMSや通信方式を指定する場合も多いため、機器選定の前に要件を確認してください。

保護装置はPCS内蔵の機能で足りますか?

一律には言えません。低圧連系では必要な保護機能の一部をPCSが内蔵している構成がありますが、内蔵で足りるか外付けの保護装置が必要かは、機器の認証内容と一般送配電事業者の技術要件・連系協議によって案件ごとに確定します。整定値を含め、連系前の試験で動作を確認する項目です。

機器はいつ発注すればよいですか?

アグリゲーターの要件(EMS・通信・計量)と連系協議の条件を確認する前の発注はおすすめしません。要件に合わない機器は後から使えず、手戻りになります。消防・設置条件は設置基準の記事、申請の時系列は電力申請の記事で確認したうえで、機器を確定してください。

出典:経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」資源エネルギー庁「よくあるご質問(太陽光発電及び蓄電池のサイバーセキュリティ確保)」東京電力パワーグリッド「低圧配電線への系統連系技術協議依頼票の改訂について」

監修

みらい電設株式会社

神奈川県平塚市を拠点に、法人向け太陽光発電・蓄電池・高圧受電設備・系統連系申請に対応する電気工事会社です。自家消費・野立て太陽光発電を含む累計500件以上の施工実績と、高圧設備・系統連系申請の実務経験をもとに、系統用蓄電池(BESS)の設備構成の検討、単線結線図の作成、電力申請・系統連系の支援、EPC施工、試験対応までを支援しています。

建設業許可:神奈川県知事許可 第088603号/川崎市 太陽光発電設備普及事業者登録/小田原市 販売・施工事業者登録
最終更新:2026年7月