太陽光発電のメンテナンス義務化について
- 2022/06/02
- 太陽光発電メンテナンス(O&M)
太陽光発電をお持ちの皆様は、所有されている太陽光発電設備がメンテナンスの対象かもしれないことをご存じでしょうか?
太陽光発電と聞くとメンテナンスフリーのイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、メンテナンスを怠ってしまうと、FITの認定が取り消されてしまい、今後発電された電気を売電することができなくなってしまうかもしれません。
今回は、太陽光発電のメンテナンスに関して、義務化となった背景やメンテナンス項目についてご説明させていただきます。
是非、最後までご覧ください。
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太陽光発電のメンテナンスが義務化されている理由
太陽光発電のメンテナンスが義務化になった背景としては、設備の管理を怠ったことにより様々なトラブルが発生したことに挙げられます。
もともと、低圧の太陽光発電にメンテナンスは義務付けられていませんでした。
そのため、メンテナンスを怠った野立ての太陽光発電にて、
・雑草が生い茂っている
・太陽光発電設備の各種部品等が散乱している
等の問題が多数報告されていました。
また、住宅用の太陽光発電に関してもメンテナンスは義務づけられていなかった為、破損や火災といった問題が起こるリスクの高さが問題視されていました。
それらの問題点を解消するためにFIT法の改正が行われました。
FIT法とは、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」のことであり、別名「固定価格買取制度」とも呼ばれます。
この法律は、当時あまり普及していなかった太陽光発電の普及を促進する為、また安全に運用していくために施行されました。FIT法の施行により発電した電力は電力会社にて固定価格で売電できるようになったため、太陽光発電が急速に普及拡大しました。
従来は、高圧または特別高圧の太陽光発電に対して、電気主任技術者による年2回のメンテナンスが義務づけられていました。しかしFIT法の改正により、低圧や住宅用の太陽光発電においてもメンテナンスが必要となる場合が出てきたのです。
そのため、皆様がお持ちの太陽光発電に関しても、知らない間にメンテナンスが義務化されている場合があるため注意が必要です。最悪の場合、メンテナンスを行わないことで設備認定が取り消されてしまう事も考えられます。
メンテナンス義務化の対象となる基準は?
ここまでで、メンテナンスが義務化されたことはお分かりいただけたと思いますが、実際にどの様な太陽光発電設備がメンテナンスの対象となるのでしょうか?
ここでは、メンテナンス義務化の対象となる太陽光発電についてご説明させていただきます。
高圧の太陽光発電設備
こちらに関しては、全ての太陽光発電においてメンテナンスが義務化されています。
FIT制度を活用していない設備においても、電気主任技術者による年2回のメンテナンスが義務化されています。
低圧の太陽光発電設備
こちらが今回の法改正により、メンテナンスが必要となった太陽光発電です。
従来は、全ての低圧太陽光発電においてメンテナンスは必要ではありませんでしたが、FIT法の改正により4年に1回のメンテナンスが必要となりました。
しかし、全ての設備においてメンテナンスが必要というわけではありません。
今回の法改正でメンテナンス義務化の対象となるのは、FIT法により売電を行う太陽光発電設備です。
そのため、
・完全自家消費型の低圧太陽光発電設備
・FITを用いた売電を行わない低圧太陽光発電設備
に関しては、メンテナンスが義務化されていません。すなわち、上記の太陽光発電に関しては、メンテナンスを怠ることで罰則が与えられるわけではないということになります。
義務化の対象でなくてもメンテナンスは行うべき?
先述の通り、一部の低圧太陽光発電ではメンテナンスは義務化されておりません。
そのため、先程の条件の対象とならない場合はメンテナンスが必要ないと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、太陽光発電はメンテナンス義務化の有無にかかわらず、基本的にメンテナンスを行うことが望ましいです。ここでは、メンテナンスを行うべき理由についてご説明します。
トラブルの早期発見に繋がる
メンテナンスや日常点検でトラブルを早期に発見することができます。
発電量の低下や、パワーコンディショナーの故障などはもちろんのこと、パネルの傾きや割れなどを早期に発見することで、発電の停止や火災などのトラブルが発生する前に予防することができます。
また、メンテナンスは自然発生的なトラブルの防止にも効果があります。
野立て太陽光発電は常に直射日光や雨風にさらされる環境にあるため、設置前に周辺環境を考慮していたとしてもトラブルが起こる可能性があります。
実際に、自然環境の変化に気づかず太陽光発電を放置してしまうと、強風などの自然災害が起きた際に被害が深刻化してしまう可能性があります。定期的にメンテナンスを行い、自然環境の変化を理解した上でそれらに合わせた対策を行うことで、これらの災害が起きた際に被害が深刻化するのを防ぐことができます。
故障が起きた際の復旧がスムーズになる
定期的なメンテナンスを行う事で、メンテナンス内容などの記録を残しておくことができます。この記録を残しておくことで、設備が故障した際に過去の記録から故障の原因を早期に突き止めることが可能になります。また、過去の記録から発電量の低下に気づくことができたり、補償を受ける際の証明書としての役割を果たすことができたりなど、メンテナンスの記録が有効となる場面は多々想定されます。
これらの理由から、メンテナンスが義務化されている場合はもちろんのこと、義務化されていない場合においても、定期的なメンテナンスを行うのがおすすめです。
義務化されている太陽光発電のメンテナンス項目
では、実際に太陽光発電のメンテナンスを行う際に、どういった項目が点検の対象となるのでしょうか?
ここでは、太陽光発電の点検箇所、またそれぞれでの点検内容についてご説明いたします。
資源エネルギー庁の事業計画策定ガイドラインでは保守点検やメンテナンス項目についての詳細は定められておらず、民間団体が定めるガイドラインを参考にメンテナンスを行う事とされています。
そのため、太陽光発電のメンテナンスにおいては、日本電機工業会(JEMA)と太陽光発電協会(JPEA)により公表されている「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」が一般的な基準となる場合が多いようです。
上記資料における主要なメンテナンス項目と主なメンテナンス内容と一覧は下記の通りです。
メンテナンス項目 | メンテナンス内容 |
太陽光設置スペース | ・周辺環境 ・フェンスなど太陽光発電設備の周辺設備 |
パワーコンディショナー | ・ディスプレイ表示 ・内部劣化や汚れ ・冷却機能の作動 ・設置環境 |
基礎・土台 | ・き裂や腐食 ・傾き |
筐体 | ・錆びや腐食 ・ゴミや水の侵入 |
配線 | ・擦れや断線 ・損傷や消耗 |
電線路 | ・腐食や消耗 |
架台 | ・錆びや腐食、変形 ・杭の抜けや腐食 |
太陽光パネル | ・焦げ跡 ・き裂や破損 ・表面の汚れ ・変形や位置のずれ |
その他 | ・発電量やデータのチェック ・太陽光発電設備全体の清掃 |
これらの内容について、目で確認する「目視」と性能の低下や安全性をデータにて確認する「測定」にて点検を行います。
また、メンテナンスの頻度として定められている最低ラインは設置後1年とその後は4年に1度となっておりますが、積雪が多い地域や強風が多発する地域等では、自然による災害を防止するという観点からもより定期的にメンテナンスを行うことがおすすめです。
ここまで、太陽光発電のメンテナンスの義務化についてご説明させていただきました。
皆様が所有されている太陽光発電もメンテナンスが義務づけられていない場合があります。しかし、災害や故障の予防といった観点からも、義務化の有無を問わずメンテナンスは定期的に行うことがオススメです。
是非今回の内容を参考に、太陽光発電設備のメンテナンスをご検討ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。