太陽光発電のメンテナンス業務について
- 2022/07/18
- 太陽光発電メンテナンス(O&M)
- 点検(O&M)
- 除草
- 防草
- 洗浄作業
- リパワリング
- IR,IV特性測定
皆様は太陽光発電の定期的なメンテナンスを行っていますか?
太陽光発電に対してメンテナンスフリーのイメージをお持ちの方、また売電による収入を意識されている方の中には太陽光発電のメンテナンスを怠っている方、または最低限のメンテナンスしかされていない方も多いのではないでしょうか?
実際に、太陽光発電はそのまま放置していても発電を行いますが、メンテナンスを怠ってしまうことにより、機械の不調や故障だけでなく、それらが原因となって大きな被害が及ぶようなトラブルを起こしてしまう可能性があります。
また、実際そういった太陽光発電に対するトラブルも多数報告されており、太陽光発電に対するネガティブイメージに繋がってしまっているという現状もあります。
では、実際に太陽光発電ではどのようなトラブルが起きる可能性があり、それらを未然に防ぐためにはどういったメンテナンス(O&M)を行う必要があるのでしょうか?
今回は、太陽光発電のメンテナンスについて過去に起きたトラブル事例や行っておくべきO&Mの業務についてご紹介します。
是非、最後までご覧ください。
Table of Contents
太陽光発電で起こったトラブル事例
先述の通り、太陽光発電を放置しておくことで、機械の不調や故障、またそれによる大きなトラブルなどに繋がる可能性があります。
ここでは、太陽光発電で起こったトラブルの事例についてそれぞれの項目に分けてご紹介します。
自然災害によるトラブル
太陽光発電が起こす被害として最も規模が大きくなりやすいのが自然災害によるトラブルです。特に災害大国の日本では、自然災害によるトラブル事例が多数報告されており、太陽光発電を所有される場合にはこれらのリスクを事前に把握しておく必要があります。
自然災害によるトラブルの中で最も多いのが、台風によるものです。
台風によって、太陽光発電の様々な設備に対して負荷がかかり故障へと繋がります。
特に代表的なものとして挙げられるのが、強風による設備の破損です。台風の強風による太陽光パネルが飛ばされてしまったり、架台が歪んでしまったりするなどのトラブルが報告されています。
実際に、2018年の西日本豪雨などの台風被害では、強風によりパネルが落下したりそれに伴い発火が起こったりなどのトラブルが報告されました。
また、台風に伴う大雨により、太陽光発電システムが浸水してしまうなどといった危険性もあります。浸水を起こすことで、設備が故障してしまうだけではなく、浸水した設備に人が触れてしまうことで感電を起こす可能性もあります。
その他の自然災害としては土砂崩れによる崩壊なども挙げられます。
大雨などで地盤が緩くなった後、斜面では土砂崩れが起こりやすくなります。特に山を切り開いて作った発電所などでは、山の草木が持つ土砂崩れを防ぐ機能が無いため、土砂崩れに太陽光発電が巻き込まれ崩壊してしまう可能性もあります。
直近でも2021年7月に熱海市で、山を切り開いて開発した発電所が土石流に流され大きな被害をひき起こしました。
これらの被害をO&Mによって防ぐことは難しいものの、設計工事の際に施工基準を満たす発電所を建設することで被害を最小限に留めることが出来ます。
機械の故障によるトラブル
自然被害だけでなく、発電設備の故障や不具合などによるトラブルも報告されています。
設備の不具合を大分すると、人的要因によるトラブルと設備の劣化によるトラブルに分けられます。
人的要因によるトラブルとして挙げられるのはボルトの閉め忘れなどです。太陽光発電は様々な設備が一体となって形成されている為、それらの各所をボルトなどで固定しています。
そのボルトを締め忘れることで、部品が落下してしまったり、架台が外れてしまったりすることによるパネルの飛散などが想定されます。
また、設備の劣化として主に挙げられるのは太陽光パネル・パワコンの故障です。
太陽光パネルの劣化要因としてよく挙げられるのが配線の腐食や層間剝離などです。
層間剝離とは、太陽光パネルのセルの部分と表面のガラスの間に隙間ができてしまう現象です。隙間が生まれた部分に関しては、電力抵抗が発生してしまう他、白く変色してしまうことで発電効率が低下してしまうなどにより、全体的に発電量が低下してしまいます。
この、層間剝離は太陽光パネル内に水気が入ることで発生してしまう現象ですが、同じく湿度の高い場所では、回路や配線自体の劣化も起こりやすくなってしまいます。太陽光パネルを熱や湿気から守る封止材やバックシートなどが劣化することにより硫酸ガスが発生してしまうためです。これらの劣化により、太陽光発電設備の発電量は大きく低下してしまいます。
また、パワーコンディショナーからは出火などの事例も報告されています。
パワーコンディショナーは電力を直流から交流に変換したり、電力の供給先や電圧の調整を行ったりなど様々な機能を備えた設備であり、太陽光発電設備の心臓部です。
そこからの発火となると、太陽光発電全体に大きな損害が出るだけでなく、その周辺地域まで被害が及んでしまう可能性があります。
太陽光発電に必要なO&Mとは?
太陽光発電に関して、メンテナンスを行っていない方もいらっしゃるのではないでしょか?
確かに、メンテナンスを行わなかったとしても太陽光発電は発電を行いますし、自然災害によるトラブルは防ぐことが出来ないものもあります。
しかし、メンテナンスを行うことで一定程度のトラブルを防ぐことが出来たり、発電量のアップに繋がったりすることもあるのです。
ここでは、太陽光発電のメンテナンスについて、行っておくべきO&Mの項目をご紹介します。
太陽光発電のO&Mに関しては、資源エネルギー庁によって義務化されています。メンテナンスの義務化の対象となっているのは、FITで売電を行う太陽光発電のみですが、FITで売電を行わない太陽光発電に関してもこれらと同様にメンテナンスを行うことがおすすめです。
O&Mの項目に関しては、日本電機工業会(JEMA)と太陽光発電協会(JPEA)により公表されている「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」が一般的な基準となる場合が多く、ここでは、そのガイドラインに基づいてご紹介させていただきます。
上記資料における主要なメンテナンス項目と主なメンテナンス内容と一覧は下記の通りです。
メンテナンス項目 | メンテナンス内容 |
太陽光設置スペース | ・周辺環境 ・フェンスなど太陽光発電設備の周辺設備 |
パワーコンディショナー | ・ディスプレイ表示 ・内部劣化や汚れ ・冷却機能の作動 ・設置環境 |
基礎・土台 | ・き裂や腐食 ・傾き |
筐体 | ・錆びや腐食 ・ゴミや水の侵入 |
配線 | ・擦れや断線 ・損傷や消耗 |
電線路 | ・腐食や消耗 |
架台 | ・錆びや腐食、変形 ・杭の抜けや腐食 |
太陽光パネル | ・焦げ跡 ・き裂や破損 ・表面の汚れ ・変形や位置のずれ |
その他 | ・発電量やデータのチェック ・太陽光発電設備全体の清掃 |
これらの内容について、目で確認する「目視」と性能の低下や安全性をデータにて確認する「測定」にて点検を行います。
また、メンテナンスの頻度として定められている最低ラインは設置後1年とその後は4年に1度となっておりますが、積雪が多い地域や強風が多発する地域等では、自然による災害を防止するという観点からもより定期的にメンテナンスを行うことがおすすめです。
太陽光発電のトラブルを未然に防ぐためにも、是非今回の内容を参考に、太陽光発電設備のメンテナンスをご検討ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。